慢性上咽頭炎に対する上咽頭擦過療法
(B-SPOT療法、epipharyngeal abrasive theraphy: EAT)
慢性上咽頭炎の概念、ならびに塩化亜鉛溶液を用いた上咽頭処置は1960~70年代に注目されていましたが、様々な理由で1980年代以降は姿を消していました。最近の免疫学や脳神経学の進歩により、慢性上咽頭炎及びEATが全身に及ぼす影響の一部について説明可能となり、さらには、その臨床効果が認識されるに伴って再び注目を集めています。奏効率については、上咽頭炎を認めた後鼻漏、咽頭違和感症状については、8割程度、肩こり、頭痛、めまいにつぃても一定数改善されたとの報告もございます。安全性については、明らかな問題は指摘されておりませんが、嗅覚障害を起こす可能性が否定できないため、嗅神経が分布する鼻腔の天井部位は避けた方が良いとさせております。
対象
後鼻漏症状が続いている方、のどの違和感、咳が続いている方で、
投薬や鼻洗いなどの処置により効果が得られない方。
そのほかにも頭痛や疲労感、ふらつきの方など様々な症状に悩まされている方も対象となる可能性があります。
ただし、あくまでファイバースコープでの観察や実際擦過し出血があるか確認したうえで、上咽頭が炎症を起こしている方が対象となります。
ご希望の方はお気軽にご相談ください。
EATの手順
- ➀希釈した塩化亜鉛溶液(0.2~1%)に浸した綿棒を、片方の鼻孔から上咽頭後壁に突き当たるまで挿入する。
- ➁上咽頭後壁に到達したら、綿棒で引っ搔くように20回ほど様々な方向へ強く擦過する。
- ➂もう一方の鼻孔も同様に行う。
- ➃嚥下亜鉛溶液に浸した咽頭捲綿子を口腔から上咽頭に挿入し、上咽頭天蓋部を含め広範に擦過する。
臨床経過に応じて1~2週に1回のペースで処置を行い、症状がある程度落ち着いた時点で患者様との相談のうえ治療を終了とします。平均10回程度、1カ月~6か月が目安です。
基本的に痛みを伴う治療となります。
EATの作用機序
- ➀塩化亜鉛の収れん作用による炎症の鎮静化
- ➁上咽頭の迷走神経の感覚神経刺激による神経システムへの作用
- ➂局所的寫血による上咽頭粘膜下の細静脈おそびリンパ流路のうっ滞解除
慢性上咽頭炎をご自宅で治したい方は下記をご参照ください。
また詳細につきましては、
https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis
をご参照ください。
参考文献:
- つらい不調が続いたら、慢性上咽頭炎を治しなさい 著者:堀田修
- 堀田修,田中亜矢樹:上咽頭擦過療法(EAT)の臨床効果から見える慢性上咽頭炎が関連する多彩な病態.医事新報5007:30-36,2020.
- 大野芳裕:慢性上咽頭炎に対する上咽頭擦過療法の治療効果.口腔咽頭科32:33-39,2019.